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『機動戦隊ブレイジャー』Mission.01 ( II )

 2010-11-21
 

 ―[2]―


 時刻は午後三時のおよそ十分前、澄みきった青空にチャイムの音色が、全ての授業の終わりを告げるかのように響き渡る。
 その下一帯に目を向ければ、あたかもレッドカーペットとでも形容すべき光景が広がっているのが見てとれた。
 通学路を埋め尽くす、えんじ色のブレザーに身を包んだ多くの生徒達が作り出すそれは、半ばこの町の風物詩とも言えるものでもあった。
 そしてその真っ只中に、がっくりとうなだれた様子の真帆の姿もある。

「なんで今日に限って、ハヤシライス売り切れなのよ……」

 目当ての学食を食べそびれ、空腹で寂しい腹をさすりながらの呟きが、冬空へと静かに溶け込んでいく。
 けれどそれだけが決して、落胆の色濃い表情の理由ではないはずだ。
 小テストの結果への不安、そして何より――朝遭遇した奇妙な一幕もまた、その一因となっているのかも知れない。
 あれこれ思案を重ねる彼女の歩みはいつしか、通学路の半ばにある大きな陸橋の辺りでパタリと止まっていた。
 
「今月残り少ないのに……なんでこうなるんだろ」

 取り出した財布を力なく振ってみても、チャリチャリという寂しげな響きになんら変化は見られない。
 懐の寒さを再確認するようなその行為を軽く後悔しつつ、見上げたその先に見えるのは、駅ビルを始めとするビル街の姿だ。
 
――ホントに、どうしよっか……。

 財布の中に残っているのはわずかばかり、しかし家に帰りつくまでに、腹が持つ確証もまたない。
 しばしの逡巡を経て、意を決した様子で再び真帆は歩き出す。
 その表情は、先程までのそれに比べて微かながら、明るさを取り戻しているようにも見えた。


 ―――


 数分後、真帆の姿は駅前のとあるファストフード店にあった。

「死ぬかと思ったぁ……」

 盛大な溜息をつく真帆の眼前にあるのは、ハンバーガーとポテト、それにドリンクが乗っかったトレイだ。
 よっぽど腹が減っているのか、いただきますの挨拶もそこそこに、破るように包みを開けてハンバーガーに齧り付こうとした時だった。

――じゃあ昨夜の隕石も、やはり奴等が一枚噛んでたってことか?

 不意に耳にしたその言葉が、真帆の目を後方へと向けさせる。
 大通りに面した窓際のそのテーブル席に陣取るのは、四人連れの若者達。
 揃いのジャケットに身を包んだ彼等の興味深げな会話に、真帆は思わず耳をそばだてずにはいられなかった。
   


「間違いないわね。キャプテンからの報告内容……それに、昨夜の定点観測の結果から見ても」
「となると、それがただの隕石じゃない事は間違いないだろうな。そうなんだろ、マモリ?」
「ただの隕石どころか……とんでもない代物よ。これを見てもらえる?」

 手元のファイルを示しつつ説明に当たるのは、窓側の席に座るマモリと呼ばれた女性だ。
 サラリとしたロングヘアーに端正な顔立ち、そして穏やかにして明朗な語り口や立ち居振舞いとが、知的で落ち着いた雰囲気を醸し出しているかのようだ。

「ご丁寧に合金と隕鉄でカモフラージュしてるけど、これはれっきとしたエネルギー体、それも極めて高純度のものよ」
「確かに……ここらの星域に、こんなものがゴロゴロ転がってる訳もないしな」

 それに答えるのは、先程真帆が真っ先に耳にした声の主。マモリの向かい側に座っている、精悍な顔付きの青年である。
 細身ながらもがっしりとした体躯と鋭い眼光とが、彼の持つ逞しさや力強さを物語っていた。
 そんな彼が一瞥したのは、マモリの傍らに置かれていたアタッシェケース。シュウが持っていたものと同型のものだ。
 おそらくはそのどちらとも、件のエネルギー体の片鱗が納められているのだろう。

「まだ詳しい解析は完了してないけど、このほんの小片だけでも内包されてるエネルギーの量が半端じゃないの。
 元々の大きさ、そしてあの勢いのまま地表に激突してたら間違いなく……この惑星の六割方は焦土と化していたわね」

 そこで区切りを付けると、目の前の紙コップの中身をほんの少しだけ、口に含む。
 やや重たげだったマモリの顔が、その一口で微かに綻んだように見えた。

「すんでのところでキャプテンが追いついてなかったら、どうなってたか分かったものじゃないわ」
「その時は俺達の手で何とかするだけの事だ。そもそも俺は最初から、そのつもりでいたがな」
「タスクも簡単に言ってくれるわよね……そういう場合、一番骨を折らなきゃならないのは私なんだから」

 やや呆れた様子で肩をすくめるマモリを他所に、青年――タスクは平然とした表情を崩さぬままだった。
 
――なんか、結構とんでもない話聞いちゃってるかも……。

 思わず周りを見回す真帆だったが、どうやら彼女以外誰一人として、マモリ達の話を気に留める者はいないようだ。
 そんな真帆を尻目に、マモリ達の会話は続けられていく。



「……それにしても妙なもんだな」

 しばしの間を置いて、再び口を開いたタスク。その顔には若干ながら、疑念の色が浮かんでいる。
 その一言に、ハンバーガーの包みを開こうとしていたマモリの注意が再び引き付けられた。

「どういうこと?」
「それほど御大層な代物の割に、出張ってきてるのは奴一人だけ。ここまでの追跡の中で部下の気配も感じられないとなると……
 奴が本当に探索に本腰を入れてるのかどうか、あるいは他に何か目的でもあるのか、疑問に思えてくるんだ」
「向こうが何を考えてるのか、完全に推し測ることは出来ないけど……私はこう考えてるの」

 そこで言葉を切った彼女の視線が窓の外、高みに向かって投げかけられる。
 まるでその先に何かの、いや誰かの姿を見出だそうとするかのように。

「今回の彼の行動はあくまで上も預かり知らぬこと、というより……むしろ上に知られてはまずいこと、じゃないかしら」
「その根拠は?」
「ああやってコソコソ立ち回ってる事だけでも、これまでの事例と照らし合わせてもかなり異質なものよ。
 ゙ディザイアズにとって、たかが石ころひとつ見つける為に隠密行動を取らせる意味なんて、無いに等しいんだから」

――ディザイアス。
 マモリの口から出たその名前は、今回彼女達が追っている対象とも何らかの関わりがあるのだろう。
 心なしか、喋るトーンも再び、低めに転じているように感じられた。

「必要ならば持てる力で直接、そして堂々と小細工抜きで行動を起こす……
 それがディザイアスのやり口だってことは、タスクも十分わかってるでしょ?」

 そこで区切りがつくのを見計らってか、マモリの隣にいた少年が彼等の会話に割って入って来た。

「ま、その辺はアイツに直接訊いてみた方が早いんじゃね?」
「あ~っ!?それ私のっ!」

 自分の分を早々に平らげたのか、マモリの分であろうポテトにまで手をつけている少年に、抗議の声を上げるマモリ。
 それまでの理知的な振る舞いとは違った、どちらかと言えば少女っぽい側面がそこからは窺えた。 
 
「もう本っ当に食い意地張ってるんだから、ハヤトってば。あたしだってまだひとつも手をつけてないのに……」
「ゴメンゴメン、マモリ姐さん」

 不満げな様子でたしなめるマモリに対し、所々癖の目立つ栗色の髪を掻きつつ、人懐っこそうな笑顔を向ける少年――ハヤト。
 声変わりこそしているものの、四人の中で最も年少に見えるのは、その小柄な体格や愛嬌のある顔立ち故だろうか。

「ま……オレにかかれば朝メシ前、ってもんでしょ」
「オレじゃなくてオレ達、だろ?それにもう昼メシすら終わりかけてるがな」

 タスクから皮肉めいた突っ込みを入れられながらも、ハヤトに向けられる二人の眼差しはとても穏やかなものだ。
 それに応えるようにハヤトも、ニカッと明るい笑顔を彼等へと向けて見せた。あたかも兄弟のような、そんな雰囲気が伝わってくる。



 が、そんなハヤトの鼻っ柱をへし折らんとする者が一人。

「相変わらずの自信過剰というか、見通しの無さというか……ハヤト君のそういうところには本当に呆れてしまいます」

 盛大なため息を伴って、チクリと苦言を呈するボブカットの少女。その歳は大体ハヤトと同じか、あるいはやや上といったところか。
 眼鏡越しにも分かるパッチリとした瞳に、可愛らしさと凛々しさの同居した作りの容貌が目を惹く。

「……こちとらいっつもお前の理屈っぽさに呆れてんだけどな、ケイ」

 向かい側の少女――ケイの言葉に、ハヤトはうんざりした素振りを見せる。こうして注意される事は日常茶飯事なのだろう。
 そんなハヤトの不満も意に介さぬと言わんばかりに、ケイもまた話の輪へと加わってきた。

「仮にも相手は幹部の一人です。そう簡単に、私達の前に姿を現してくるかどうか分かったものではありません」
「まるでマモリの立てたプランに不備があるって言わんばかりの言い様だな」
「ほら、そうやっておちょくらないの」

 ややからかいの念の込もったタスクの皮肉を制し、ケイの方へと目を向けるマモリ。

「確かにあなたの言うことにも一理あるわね。過去の事例から考えて、私だってそう簡単に事が運ぶだなんて思ってないもの。
 でも……これがあるとなると話は別ね」

 きっぱりと断言するその左手は、傍らのアタッシェケースに重ねられていた。
 マモリの語りから察するに、彼等の追う対象もまた、この中に眠るエネルギー体。を狙って行動を起こしたのだろうか。

「今の彼にしてみれば、これは喉から手が出るほど欲しいものだと思うの。当然、これがある以上どこかで必ずぶつかる事になるわ」
「しかし、そうは言っても……」
「マモリ姉さんの言う通り。大体さぁ、イチイチ心配ばっかしてたら何も出来やしないって」

 反論を遮るような形で割り込んできたハヤトに、ケイは眉をしかめつつもそれに応じる。

「あなたに意見を求めた覚えはありません。そもそもハヤト君、あなたは基本的に見通しが甘過ぎるんです。そんな事では……」
「捕まるもんも捕まらない、ってか?心配しなくったってちゃ~んと考えてるって、誰かさんと違って成功した時の事をさ」
「そういう根拠のない自信が一番危険だと常々言ってるのに……ハヤト君!」

 何時しかハヤトの興味がハンバーガーに移っているのを見てとってか、思わず声を荒げるケイ。
 今にも詰め寄らんばかりの勢いの彼女を制するように、隣のタスクの手がそっと伸ばされた。

「こんなところでのいがみ合いほど、一番無駄な事はないんじゃないか?」
「そうそう。あんまりにも楽天的過ぎなのも困りものだけど」

 ツンツンと、ハヤトの鼻先を人差し指で突っつきながら語りかけるマモリ。
 ややムッとした面持ちでそれを払い除けるハヤトを横目に、彼女の語りはさらに続く。

「おんなじように、考え過ぎなのもよくないと思うわ。少しはリラックスしないと、ね? ほらこれ、結構おいしいんだから」

 言い終わるや、トレイの上にあったハンバーガーのひとつを、何も置かれてないケイの前へと差し出す。
 少しばかり逡巡する素振りをみせたものの――ややあって、ぽつりと呟くようにケイの答えが返ってきた。

「……折角ですが、遠慮させてもらいます」
「……そう?」


 少しさびしげなマモリの表情だけを残し、差し出されたハンバーガーはそっと引っ込められる。
 その様子を最後まで見守る事なく、ケイはうんざりした面持ちのまま、窓の外へと視線を移していた。
 
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