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『機動戦隊ブレイジャー』Mission.02 ( I )

 2012-12-31
 ―[1]―

「えぇ~っ!?」

 夜の幹線道路を走る一台のスポーツカー。
 その助手席から発せられた素っ頓狂な声が、狭い車内に響き渡った。

「……さっきも言ったはずです、僕はあの彼方から来たって」
「まさかホントに……宇宙人だったなんて」

 ハンドルを握りつつ、平然と答えるシュウのその言葉に、真帆は茫然とした様子で天を仰ぐ事しか出来なかった。
 俄かに信じ難い話ではある。
 あの”四本足”も、このスポーツカーも、そしてそれを運転するシュウまでも――それらが皆、遥か遠い宇宙からの来訪者なのだとは。
 そんな思いが、戸惑い気味な真帆の顔にも色濃く表れていた。
 それを察してか、シュウの優しげな声が真帆へとかけられる。

「信じられないという気持ちはよく分かります。僕だってあなたと同じ立場なら……同じように感じていたかも知れません」
「……でも本当のこと、なんですよね」
「もちろん。君に嘘を吐かなきゃならない理由はありませんから」

 ちらと真帆が見遣ったシュウの横顔は、やはり朝出会った時と同様に落ち着いたものだ。
 わずかな疲れの色すら滲ませないその様子から、先程まで彼が激しい闘いを繰り広げていたと誰が窺い知れるだろう。
 やはりただの人間ではない、そうとでも言わんばかりの面持ちをそのままに、真帆は何度目かの問いをシュウへと投げかけた。
 
「そう言えば…あなたって一体、何者なんですか?」
「だから僕は、あの彼方から来た……」

 不意に切り出されたその問いを耳にして、シュウの視線が真帆の方へと向けられる。
 先程の彼の言葉からも窺えるように、似たような質問は何度もぶつけられていたのだろう。
 それでも嫌そうな表情を見せる事無く、シュウは淡々とその問いに答えてみせる。

「そうじゃなくて、一体どこから、何の為に地球に来たのかってこと。あ、後名前も聞いてませんでしたよね?」

 シュウにとって、核心を突かれたような問いだったのか。
 ほんの数刻の間の逡巡の後、向けられたその表情に俄かに真剣みが帯びたのを、真帆はハッキリと感じ取った。

「半ば巻き込むような形になったのは申し訳なく思います。でも……これ以上君を深入りさせる訳には行かない。
 忘れてくれとまでは言いません。ただ、今までに僕が言った事、そして今日君が目にした物………その全てを胸の内に留めておいて下さい、絶対に」
「……トップシークレット、ってことですね?」

 真帆もある程度は予想していた反応なのだろう。やや寂しげな色を滲ませたその問いに、シュウは無言で頷き返す。

「……じゃぁせめて、ひとつだけ教えて下さい。どうして私のこと、助けてくれたんですか?」

 再びの問いかけを前にして、シュウの眼が静かに細められる。
 普段の温和な様子とは異なる、捜査官としての貌がそこからは窺えるようだ。 

「僕等の立ち向かう相手は、僕らにとっても………そしてこの星全体にとっても、未曾有の脅威と言ってもいい。どんな命を命と思わない。自らの欲望のために他の命を利用し、玩び、そして何の容赦もなく踏み躙る……そんな存在です。
 そんな奴等から、命あるものをを力の限り守り、戦い抜く。それがこの星に降り立つに当たって、僕等が与えられた任務でありそして、使命なんです。例えそれがどんなに小さく、儚い命だったとしても」

 今までに増して静かな、それでいて力強い響きを持ったその言葉には、シュウ自身の”任務と使命”に対する強い思いがこもっているのだろう。
 真帆に対してだけでなく、あたかも自らに対しても語りかけているような、そんな風にさえ感じられる。

――そうだよね、シュウさんにとってはあたしも守るべき命のひとつでしかないんだよね……ホント、何考えてるんだろ。

 呟きにも満たない、微かな胸の内を気取られぬよう、真帆の顔が窓の方へと向けられる。
 当人でさえも馬鹿馬鹿しいと思えてしまうその考えはしかし、ある意味では当然とも言えるものやも知れない。
 二度も命の危険を救われ、その命の恩人の仲間達の会話を目の当たりにし、そして間近で彼等の戦う様を目の当たりにしていたのだ。
 今のところこの地球上では他の誰よりも、シュウ達に近しい存在なのではないのだろうか。そんな風に真帆が錯覚してしまったのも無理からぬ事と言えよう。
 程なくして、再びシュウの方へ向き直った真帆の顔には、それまでとは打って変わって底抜けに明るい笑みが浮かんでいた。

「……そういうのって、カッコいいですよね。なんて言うんだろ、全宇宙の命を守る正義のヒーロー、みたいな感じで」
「正義のヒーロー、ですか」

 真帆の例えがイマイチピンと来ないのか、少々戸惑った

「そこまで立派なものなのか、僕等には分かりません。でも……決して悪い気はしないですね」

 どこか照れくさそうな、しかし決して満更でもなさそうな、そんなシュウの笑顔にほんの少しだけ、胸のつかえが取れたのだろうか。
 シュウを見遣る真帆の表情もまた、わずかに綻んでいるように見えた。


 ―――


 結局この日真帆が家に帰り着けたのは、九時を大分過ぎた頃だった。
 居間に足を踏み入れると、テーブルの上のメモが真っ先に目に飛び込んで来る。

――今日からまた海外なんだっけ、お父さん……。

 今朝出かける前、既に目にしたその内容が再び呼び起こされる。
 そうして父親の不在を再度確認すると、部屋の明かりも付けぬままソファにドサリと腰掛ける。昼間起きた奇妙な出来事を、そして車中でのシュウの言葉を振り返りながら。
 突然街に襲い掛かった、巨大な四本足のロボット。
 それから自分を救ってくれた、紅いスーツに身を包んだシュウの姿。
 巨大化し、そしてロボットへと変形を遂げた彼のスポーツカー。
 そして彼の語る、宇宙警察なる組織とそれに相対する未曾有の強敵の存在。
 どれもこれも、真帆にとっては俄かに信じ難い事ばかりだ。なまじそれらを目撃し、そして体験してしまっただけに、その混乱はより一層深まっていく。
 だがそれ以上に、真帆の心中を満たしていたのは言いようのない不安だった。

――今までに僕が言った事………その全てを胸の内に留めておいて下さい、絶対に……。

 車中にて、シュウが残していった言葉が頭の中を駆け回る。
 自分自身やその周囲はおろか、地球全体にとっての未知の脅威。そしてそれに立ち向かう、宇宙から来たこれまた未知の存在。
 これらの事実を知っているのが、知りうる限りで自分ただ一人であるという事が、真帆を深く悩ませていた。
 誰にも明かさずにこれからの日々を過ごしていく事が、決して容易な事ではないと感じられるからこそ。


 人知を超えた出来事に遭遇したが故の混乱。その秘密の一端を知っているが故の不安。それらを共有し、解消してくれる者は、身の回りには誰一人としていない。
 その事実が、真帆の寂しさをより一層募らせる。

「……お母さん、どうしたらいいんだろあたし」

 ポツリと寂しげな呟きをこぼしながら、真帆の目が棚の上の写真立てへと向けられる。
 真帆によく似た眼鏡の女性の姿が、そして本来なら真帆の混乱や不安を解いてくれる筈の存在が、そこには写し出されていた。 
 木漏れ日に照らされたその女性の微笑みは包み込むような優しさと温かみに溢れ、見る者に等しく安らぎを与える。
 だが、普段なら心癒されるその笑みさえも、今の真帆にとっては焼け石に水のように感じられた。
 それが真帆の抱える不安の大きさを、端的に示しているようでもあった。

 ふぅと溜息一つ吐くと、真帆はソファに身を預けながらゆっくりと目を閉じる。
 その途端、これまでの疲れがドッと込み上げて来るような錯覚に襲われた真帆は、たちどころに眠りの深淵へと引き込まれていた。

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