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『機動戦隊ブレイジャー』Mission.02 (avantitle)

 2012-01-04
 
 
 ―――


 暗闇と、機械の駆動音とが多くを占める一室。
 その中に立つ部屋の主のシルエットが、壁面に備え付けられたモニターの淡い輝きによって浮かび上がっているのが見てとれる。
 白衣を羽織った上からでも分かる、すらりとした細身のプロポーション。
 そして腰まで伸ばされた黒のストレートヘアと端正な顔立ちとが、主が女性である事を伝える。
 金縁の眼鏡の奥、彼女の切れ長の目はひたすらに、モニターに映し出された映像に興味深げな視線を注いでいた。
 視線の先にあるのは、あの”四本足”を鋭く指さす紅いロボット――レッドキャリバーの姿だ。あの戦いの最中に記録されたのだろうこの映像は、彼女の手の内で玩ばれている鉛色の球体によって収められたものだった。
 戦闘の進むのに合わせて、モニターの端々に次々と数字やグラフが表示されていく。彼女の眼前で戦いを繰り広げる、二体のロボットを分析し得られたものであろうそれらの数値をもちろん、彼女の眼が逃す事はなかった。

「話には聞いていたけど、どちらも想像以上のスペックの持ち主だわ。特にレッドキャリバー……あの機体のポテンシャルには目を見張るものがあるわね」

 微かながらも、興奮しきった様子の呟きが無意識のうちにこぼれ出す。それは見た目通りの科学者としての、彼女の性分故なのだろうか。

「……まぁ、貴方の”お友達”には敵わないでしょうけれど。そうよね、グィリィ?」
「呼んだ、ドクター?」

 先程の呟きとは打って変わった穏やかな声が、この部屋の中にいるはずのもう一人に向かって投げかけられる。
 それに応えるようにして彼女の背後から姿を現したのは、まだ十歳程に見える一人の少女――グィリィだった。
 この場の闇にも溶け込むような黒いゴシック調のドレスに、吸い込まれそうな程の深みを感じさせる漆黒の瞳。ドレスから覗かせるきめ細かな素肌に、所々あしらわれた美しさと禍々しさが同居したかのような装飾。
 絶妙な対比を見せるそれらは一方で、彼女の持つ可憐さと異質さとを如実に示しているかのように映る。
 白衣の裾を掴んだまま、彼女を見上げるグィリィに対して”ドクター”が見せたその表情は、先程の呼び声と同様に至って穏やかなものだ。そんな ”ドクター”の問いにしばし考え込む様子を見せながらも、グィリィの出した答えは至って単純なものだった。

「よくわかんないけど……ドクターの作ったさいこーけっさく、なんでしょ?」
「ええ、その通りですが」
「だったら、ぜ~んぜん心配することないんじゃないかな?」
「……なかなか嬉しいことを言ってくれますね」

 無邪気に答えてくるグィリィを褒めてやるかのように、゛ドクター゛は彼女の頭を優しく撫でてやる。

――まぁ、一番の”最高傑作”は誰でもない、貴方なんですけどね……グィリィ。

 目の前の少女にも、ともすれば自分自身にさえ聞こえぬ位の微かな呟き。
 その真意を解する者は、゛ドクター゛の他には誰一人としていなかった。

「あ、でも”あの子”だけはダメなんだからねっ」

 グィリィの言葉に呼応したのか、彼女の頭上から不意に一羽の奇妙な鳥が降りてきた。
 長く伸びた二本の首と三本の脚。暗闇の中にあっても一際目立つ、鮮やかな朱色と紅に染め上げられた羽毛。そんな特徴を併せ持つその鳥は、これまた奇妙で甲高い鳴き声をひとつ上げると、そのままグィリィの左肩へと留まった。

「ソルルはあたしのだ~いじなお友達なの。ケガなんてさせたらいくらドクターでもぜ~ったい!許さないんだから」
「はいはい。そこまで言われちゃったら、ソルルを危険には曝せないわね」

 ややオーバーな身振り手振りを交えて主張してくるグィリィに、ドクターは苦笑いを浮かべながら答えてみせる。
 傍目から見れば母娘の会話のようにも取れるやり取りだが、実際にそんな関係かどうかを窺い知る術は、今のところない。
 そんな二人の会話を他所に、ソルルは主の肩の上で、欠伸にも似た退屈そうな声をバラバラに漏らすだけだった。



 と、そんな彼女達の背後から、全身を包む濃緑色のコートを翻し、硬質な足音を伴って何者かが近付いてきた。
 所々メッシュの入ったライオンの鬣のようなヘアスタイルに、左目を覆う特異な形状のスコープが目を引くその壮年の風貌は、”ドクター”やグィリィよりもさらに異質極まりないものだ。
 袖から覗く左手も、鈍い鉛色をした鋼板に包まれたような、明らかに無機的な見てくれをしている。その程度は分からないが、自らの身体に機械的な改造を施しているのは明らかであった。

「随分と余裕綽々だな、ドクター・ヘイル」
「……何の用かしら、ドクター・ライア」

 突然の来訪者―ドクター・ライアの姿を目にして、それまで穏和だったドクター・ヘイルの表情に若干、不機嫌な色が混じる。

「もう間もなく”エージェント”が地球にやって来る、その事を伝えに来たんだよ」
「あら、随分と早い到着なのね」
「俺からしてみれば遅いくらいさ。まあ君のように時間のかかる奴には、いくらかかっても足りないだろうが……」
「あ! パパだ!」

 今になってその存在に気が付いたのか、グィリィがライアの足元へと勢いよく抱き付いてくる。突然の事に、彼女の肩の上でくつろいでいたソルルは泡を食ったかのように飛び去っていく。

「パパ、おひさしぶり!」
「や、ちょっと待て、ちょっと待て……な?」

 抱き付かれた方のライアもまた、同様に驚きの表情を見せたものの、それもほんの一瞬の事。すぐさま元の表情に立ち戻るや、抱き付くグィリィを優しく、足元から引き離そうと試みる。

「とりあえず、まずはそこから離れような」

 若干不満げな素振りを見せつつも、相手が”パパ”だからなのか素直にライアの言葉に従うグィリィ。
 そんな彼女の目線に合わせるように屈むと、ライアはそれまでの渋さをかなぐり捨てた柔らかい声色で、言い聞かせるようにして語りかける。

「俺はな、君のパパじゃあないんだ。もう何度も言ってるけど、俺の事はドクターって、呼んでもらえないかな?」
「……なに言ってるのパパ? ドクターはこっちだよ」
「や、だからな……ドクターってのは誰か一人の事を指してる訳じゃないんだ。俺だって……立派なドクターなんだぞ?」
「そうなんだ……じゃぁパパがドクターってことは、あのドクターも、パパってことなの?」

 ヘイルを指さしながら、ライアの思惑から外れた問いを繰り出すグィリィ。あまりに予想外なその問いかけを前にして、彼の顔にますます狼狽の色が濃くなっていくのが見て取れた。

「だ~か~らっ! アレがパパである訳がないだろう、なっ?」
「じゃぁ……やっぱりパパはパパだよね!」

 目をキラキラと輝かせ、またも足元へとしがみついてくるグィリィに、父親である事を否定するライアの言葉は全く届いていないようだった。苦り切った様子で顔を上げると、そこには打って変わってくつくつと笑いを浮かべるヘイルの姿があった。

「相っ変わらず、君の躾はなってないようだな……一体この子に何を吹き込んでくれたんだ?」
「私からは、特に何も」
「何もしないで、俺の事をパパだなんて呼ぶ訳がないだろうに」
「刷り込みとか……そういう類のものじゃないかしら? どちらにしても、貴方みたいな男をあの子の父親だと教える程、私は残酷じゃないのよね」

 この状況を楽しんでいるかのような、そんな様子のヘイルを前にして、ライアは心底呆れた様子で深い溜め息を一つ吐くほか無かった。

「……まぁいいさ、どうせ君等とは短い付き合いになりそうだからな。俺と君、どちらかの研究成果が採用されるかまでの……な」
「そうだったわね。あれだけのことを言ったんですもの、貴方の方は相当自信があるようね?」
「ああ当然さ。君とは違ってもう既に準備も粗方済んでてな。”エージェント”の到着次第、その成果をお披露目できるっていう寸法って訳だ」
「ご自慢の研究成果が、”エージェント”のお眼鏡に適うといいわね」

 なおも余裕の表情を崩さぬヘイルを前に、これ以上の話し合いは徒労に終わると見たのだろう。ライアの表情に、俄かに真剣さが帯びる。

「これだけは言っておく。ハッキリ言って君のその頭脳と行動力は大したもんだ。この短期間でここまでの設備を作り上げ、畑違いとはいえ俺に匹敵する程の技術力を習得した。同じ科学者として、その点は素直に尊敬させてもらうよ。だがな……」

 そこで一旦言葉を切ると、鋭くヘイルを指さした彼がニヤリと、不敵な笑みを浮かべる。

――最後に笑うのはこの俺だという事を、忘れてくれるなよ。

 それだけ言い残し、ひらひらと手を振りながら立ち去っていくライア。そんな彼の姿を見送りつつも、ヘイルは涼しげな表情を崩す事はなかった。



「行っちゃったね、パパ」
「……上等じゃないの」
「え?」

 訳の分からない様子のグィリイを他所に、ヘイルは独り不敵な笑みを浮かべるのみだ。

「なかなか嬉しい事を言ってくれるけど、どうやらまだまだ私の事を熟知してないようね。私の実力は……こんなものじゃないんだから」

 勝ち誇るように言い捨てるヘイルの背後に、何やら怪しげな装置の姿が見て取れる。液体の詰まった卵形のカプセルの数々に、それらを繋ぎ取り巻く大小様々のチューブ。
 あたかも臓器を機械的に再現したような、そんな印象を与えるそれこそが、ヘイルの最大の武器とも言えるものであった。

「それにあいつに勝とうが負けようが、私の目的には全く影響しない。いいえ、させるものですか……」

 呟きながら一瞥した先に、依然として不安げな様子で見上げるグィリィの姿があった。彼女の言うところの”目的”に、グィリィが係っている事は明白だろう。




――そのためにも、精々あの子達の相手を頑張ってもらわないとね、宇宙警察の皆さん……!

 グィリィの手を取り、この部屋を後にすべく歩き出すヘイル。そんな彼女の切れ長の瞳には、自らの目的に対する並々ならぬ決意の炎が宿されていた。




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