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『機動戦隊ブレイジャー』Mission.01 ( V )

 2011-08-31
 

 ―[5]―


 一帯に漂う土煙のその向こう。
 先程まで轟音と共に空の上にあった飛行体は、今や三、四十メートルもあろう巨大な塔に転じ、かのバベルの塔を想起させるかのような威容を醸し出していた。
 単に巨大なだけでない。
 一面漆黒の概観、そして空にあった時と同様、各所から突き出た禍々しい棘や突起の数々。それらがより一層、見る者の多くに戦慄を与える。

――何だよありゃぁ……。
――ミサイルか!?
――飛行機じゃない?

 逃げ惑う群衆、それに付近で救助や避難誘導に当たっていた警官達やレスキュー隊の中から、恐れや不安、驚きの声が漏れ聞こえる。
 交差点に突き刺さったという事もあり、周辺のビルなどへの被害は今のところ比較的軽微ではあった。だがそれはあくまでも今現在の話。いつ何が起こるか、それは誰にも分からないのだ。
 この一帯は今や、突然降って湧いた災厄に対する恐怖に完全に支配されていると言ってもいいだろう。
 そしてその様子は、少し離れていた場所にいる真帆にも伝わっていた。落下地点からやや離れているとは言え、市街地であるこの場所も危険である筈だが、なぜか真帆はこの場から動くことが出来ずにいた。
 それは恐怖ゆえなのか、はたまた好奇心ゆえなのか。
 暫しの間、彼方に聳える黒い物体を注視し続けていた真帆の、そして人々の目前で、その変化は突如として訪れた。


 金属が軋むような音が黒い物体の中から聞こえ出すと共に、その表面にスッと線を引いたような亀裂が走り始める。
 その異変に、の間にも緊張が走る。
 そして次の瞬間。
 ピタリと音が止んだのを皮切りに、地面に突き刺さっていた先端がまるで内側から弾けたかのように四つに分かれた。そしてそれに追随するかのように、上方のブロックも複雑かつ奇怪にその形状を大きく変え、人の上半身にも似た姿を形どる。
 瞬く間に全ての変形を終えた黒い物体は、脚が四本と言う違いこそあれ、まるで人の上半身を持った蜘蛛のような姿へと転じていた。
 突然の出来事に、付近に残っていた人々も泡を食ったかのようにその場から逃げ去っていく。先程まで賑わいを見せていたのが嘘のように、この大通りはしんと静まり返っていた。
 そんな静寂の中にあって、”四本足は”頭部に備え付けられたモノアイをただ明滅させていた。その不穏な明滅の間隔が徐々に短くなり、終にはそれが止まった時――突如としてモノアイから、赤色のレーザーが断続的に発射された。
 レーザーの直撃を受け、周囲のビルや建物が次々と吹っ飛び、瞬く間に瓦礫の山があちこちに生まれる。幾筋もの黒煙が烽火のように立ち上り、燃え盛る火焔が空を焦がしていく。
 そしてそのレーザーの一つは、真帆のいる付近をも襲った。炸裂音と共に吹き飛んだビルの破片が、雨あられと地上に降り注いでいった。

「きゃぁぁッ!」

 逃げる暇すら与えられず、見る間に一帯は瓦礫によって塞がれ、辺りを土煙が覆い隠していった。


 その光景を、”四本足”はただ無言のままに見下ろすのみだった。

 ―――
 
 レーザーの攻撃によって生まれた瓦礫の山の間を縫うかの如く、エンジンの唸りが彼方から響いてくる。落下地点へと向かって、猛スピードで駆け抜けていく紅いスポーツカー。それがこの響きの主だった。
 フロントガラスが陽の光を反射している所為か、運転しているシュウの顔を窺い知ることは出来ない。唯一、ハンドルを握る白いグローブに覆われた手が見えるのみだ。

「ディザイアス……!」

 小さく、しかし力強い呟きと共に、手元のシフトレバーがゆっくりと手前に引かれる。そんなシュウの様子には、まるでこの惨状を生み出した何者かに対しての、怒りにも似た気迫が感じられた。
 
「マモリ、現状はどうなってる?」

 ダッシュボードにセットされた携帯電話を通じ、マモリへと問いかけるシュウ。

『あまりいい状況ではありません。シグナ―、ガーダー共に戦闘不能、残ったビルダーも押され気味です』
「やはりブレイブモードが必要か……マモリは二機の回収を急いでくれ。俺も間もなく現着する」
『ロジャー』

 通信が切られたのとほぼ同時に、アクセルがぐいと深く踏み込まれた。メタリックレッドのボディを眩しく輝かせつつ、スポーツカーは徐々にそのスピードを上げていく。

――どうか間に合ってくれよ……!

 フロントガラス越しに、激戦による爆炎が断続的に立ち上っているのが見える。その光景を前に、シュウの表情はより一層険しさを増した。
 
 ―――

 ここで一旦、時間をほんの少しだけ遡ろう。
 瓦礫に覆われたビル街の一角。
 その中から伸びてきた、一本の細腕があった。埃にまみれ、汚れてしまったその腕を必死に伸ばし、積み重なっている瓦礫を押しのけてそれは外へと出ようとしていた。
 十数秒ほどの間を置いて、内側から瓦礫が押し退けられた時、真帆だ。
 あのレーザーによる攻撃で、降り注ぐ瓦礫の雨に飲み込まれた彼女だったが、幸運にも瓦礫の下敷きにならずに済んだようだ。
 腕同様全身埃まみれで、黒い髪もえんじ色のブレザーも白っぽく煤汚れてしまったが、負った怪我自体は小さな擦り傷程度だったのは不幸中の幸いといったところだろうか。

「助かったぁ……」

 肩で息をしつつ、その場にへたり込む真帆。とは言え、こんな状況下ではいつまた命を落とすやも分からない。依然として”四本足”はあの交差点にあるのだから。
 瓦礫に手をかけ、再び立ち上がろうとした真帆の耳が、不意に彼方から聞こえてくる轟音を聞き取った。

「……えっ!?」

 彼女の目が、再び驚きに見開かれた。
 頭上高く飛来してきたそれは、いわゆる”輸送機”に分類されるものに見える。しかし地上からも余裕でその巨大さを視認可能なサイズ、そして主翼の下に大型のコンテナらしきブロックを備えたフォルムは明らかに、一般に知られるそれとは異なるものだった。
 その様を見守る真帆の視線の先、輸送機から投下された三つの影があった。空中に展開された、光で形作られた同じく三つの六角形を潜り抜けた時、それはより巨大なビークルへと、その姿を変えていた。
 ブルドーザー、パトカー、そして新幹線。普段目にするような乗り物に見えながらもしかし、先程の輸送機と同様に明らかな異質さを兼ね備えたこのビークル達は、その機体の下面に配されたブースターを盛大に吹かし、落下の勢いを殺しながらゆっくりと降下していく。

「きゃっ!?」

 先程の飛行体ほどではないものの、強い振動を伴って着陸した三機。自分の元にも伝わってくるその揺れに、思わず真帆も声を上げてしまう。飛行体と相対するように陣取ったそれに、上空の輸送機から指示が飛んだ。

『みんな、準備はいいわね?』
「当然だ」

 各々のコックピットの内に響き渡るは、あのマモリの声だ。それに真っ先に、そして手短に応えたのは巨大ブルドーザーのパイロットたるタスクであった。平手に拳を打ち付け、言葉通り準備万端といった様子が窺える。

「まだブレイブモードへの変形は無理なんだっけ、マモリ姉さん?」
『今のところ調整が完了してるのはキャリバーだけね』
「そっか……ま、三人いれば何とかなるっしょ」

 巨大新幹線のコックピットにはハヤトの姿があった。彼とマモリの会話から察するに、これらのビークルには何らかの変形機構が実装されているようだ。少なくとも今の時点では、その姿を拝む事は出来ないようでもあるが。

「付近住民の避難は完了している模様です」
『意外に避難が迅速に済んだみたいね……』

 避難状況を確認できた以上、いつまでも様子見を決め込む理由はない。既にシュウからミッション開始の承認は得ていたマモリは、即座に地上の三機へと指示を出した。

「ブレイジャー・ミッションスタート、ゴー!」
「フォワード!」

 その号令を受け、地上のビークル達が行動を開始した。


 ―――


「ホールドウインチ!」
「コネクターウインチ!」

 真っ先に動きを見せたのは巨大新幹線とパトカーだった。
 パトカーのフロントバンパー、そして新幹線の連結部からそれぞれ射出されたワイヤーが”四本足”へと絡みつき、その身体を雁字搦めに縛りあげた。
 それを振りほどこうとする”四本足”と、二機のビークルとの間で一進一退の攻防が繰り広げられる。立て続けに放たれるレーザーをもものともせず、二機のビークルはじりじりと後退を続けていく。

「いくぜッ!」

 ハヤトの叫びとともに、二機のビークルからワイヤーを伝って高圧電流が流された。激しく火花を散らし、ダメージを負った”四本足”からほんの一瞬、ワイヤーを振りほどこうとする力が弱まったのをケイは見逃さなかった。

「今ですッ!」

 ステアリングを切り、車体を勢いよく急旋回させるケイ。それによって強くワイヤーが引っ張られ、”四本足”はバランスを崩しその場に倒れ込んだ。
 が、その拍子に新幹線までもが”四本足”の方へと引き寄せられ、バランスを崩しかけてしまう。

「うぉっと……あぶねぇぞケイ! 俺まで巻き込まれ…」
「うだうだ言ってないで攻撃です!」
「ったくもう……ガーダーブラスト!」

 抗議の声もどこ吹く風といった様子のケイに軽く呆れつつも、この好機を見逃すようなハヤトではない。即座に攻撃の態勢に移ると、車体上部に備えられた二門のキャノン砲が火を噴いた。

「シグナ―フラッシュ!」

 さらにパトカーのパトライトから放たれたレーザーが”四本足”へと直撃する。集中砲火を喰らい依然として動けずにいる”四本足”へと、今まで控えていたブルドーザーが向かっていった。
 エンジンを唸らせ、瓦礫の山を踏み越え、その重厚な見てくれからは想像も付かぬ程の速さをもって突っ込むブルドーザー。車体前部のバケットが倒れ込んだままの”四本足”に叩き付けられ、強烈な衝撃にモノアイが激しく明滅を見せる。あたかも、人間が目を白黒させるかのように。

「もう一丁!」

 激突の反動で後方へと退きつつも、ブルドーザーの突撃が止むことはない。タスクの気迫を上乗せしたかのような体当たりが、”四本足”のボディを何度も揺さぶっていく。
 戦況は、ブレイジャーに圧倒的に有利なものとなっていた。


 だが、ただ黙ってやられ続ける程、”四本足”も弱い訳ではない。
 それはブルドーザーが七度目くらいの突進を仕掛けようとした時だった。輸送機のコックピットにて戦況を見守っていたマモリが、”四本足”のある異変を目の当たりにしたのは。その異変にただならぬものを感じた彼女は、即座にタスクへと待ったをかける。

「待って! ちょっと様子が変だわ」
『何ッ!?』

 急ブレーキをかけつつ、改めて”四本足”を見やったタスクが目にしたのは、それまで赤く光っていたモノアイが、いきなり青色に切り替わる様だった。

『ケイ! ハヤト! 今すぐワイヤーを切断して!』
「ちょっ、それってどういう……うわぁぁッ!」
「きゃぁっ!?」

 マモリの指示よりもわずかに早く、”四本足”は動き出していた。
 あれだけの集中攻撃を受けていながら、どこにそんな力が残されていたのだろう。それまで動きを止めていた上半身が、凄まじい速さで回転を始めた。その勢いに、拘束を続けていた二機のビークルはその場から引き剥がされ、付近のビルをも巻き込んで振り回されていく。

「このままでは……あぁっ!」
「わぁぁっ!」

 絡み付くワイヤーさえも巻き込み、勢い任せにそれを引き千切ると、たちどころに体勢を立て直す”四本足”。今までのお返しと言わんばかりに、ビルに叩き付けられたまま動けずにいる二機のビークルへとレーザーを浴びせかける。
  激しい爆発が、二機のビークルを包み込んだ。
 
「あれだけ喰らって殆ど無傷ってか……」
『ケイ! ハヤト! 応答して!』

 今の攻撃のショックでどちらも気絶してしまったのだろうか。マモリの呼びかけに対し、二人からの応答は全くない。機体も至る所に痛々しい損傷が見られ、戦闘の続行は不可能に思われた。

「ちぃッ! ビルダーキャノン!」

 ゆっくりと歩き出した”四本足へ”と、残されたタスクは攻撃を仕掛ける。ブルドーザー両側面の砲塔が火を噴き、直撃を受けた”四本足”も思わず怯んでしまう。
 しかしそれもほんの一瞬の事。依然として歩みを止める事無く、再びモノアイから放たれた数発のレーザーがブルドーザーに襲い掛かる。

「生憎なぁ、こいつはそんなにやわに出来ちゃいないんだぜ!」

 砲撃は効果がないと見てか、先程のように突進を試みるタスク。排気管から盛大に煙を噴きだし向かっていくブルドーザーに対し、”四本足”はその歩みを一旦止めるや、今度は頭部のみを回転させたままレーザーを乱射し始めた。

「ったく、どこ狙ってやがる!」
『タスク、一旦後退して!』
「無茶言うなって、今更……何ッ!?」

 乱射されたレーザーによって粉砕されたビルの残骸が、突進を続けるブルドーザーの上へと降り注いでいく。何とか突破を試みようとするタスクだったが、次々に雪崩を打って落ちていく大量の瓦礫の前に、遂には埋もれたまま身動き一つ取れなくなってしまう。
 ”四本足”の狙いは、どうやらそこにあったようだ。

「くッ………これじゃ前も見えやしねぇ」
『何とかそこから脱出出来そう?』
「出来なくもないが、今のでシステムがダウンしやがってな。復旧して抜け出すまでには……」
『この街は完全な廃墟、って事ね』

 そこでふぅと一息吐くと、マモリは意を決したかのようにシートから立ち上がる。地上にあった戦力が軒並み動けない今、残されたのは最早彼女一人だけであった。操縦をオートコントロールに切り替え、コックピットから飛び出そうとした丁度その時。

『こちらシュウ、現状はどうなっている?』
「キャプテン!?」


 この瞬間、マモリは頼もしい援軍の到着が間近に迫っている事を即座に悟った。



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