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『機動戦隊ブレイジャー』Mission.01 ( IV )

 2011-08-24
 

 ―[4]―


 街が、夕暮れのほのかな茜色に包まれ始めたその頃――。
 駅近くのビルの屋上に、悠然と立つ一人の男の姿があった。
 黒を基調とした服装、そして頭部の殆どを覆う無機質な仮面で身を固めたその出で立ちは、この街の中にあって明らかな異質さを醸し出している。

「……そろそろだな」

 眼下に広がる繁華街を見下ろしながら、異装の男の低く通る呟きが喧騒に紛れ、そして消えていく。

「あまり派手に立ち回るのは俺の主義ではないが……止むを得ん」

 異装の男の視線がほんの一瞬空の高みへと向けられたのと、その背後から凛とした女性の声が飛んできたのは、正に時同じくしての事だ。

「ホールドアップ!」
「ようやくのお出ましだな、宇宙警察の小ネズミ共」

 その声を受けた異装の男がやおら振り返った先にあったのは、マモリとハヤト、二つの人影だった。
 卵型のシルエットをもった、硬質なフルフェイスのヘルメットに、全身をピタリと包み込むスーツ。そして右手に握られた特異な形状のハンドガンと、その出で立ちは先程までとは大きく異なっていた。
 マモリのそれが澄んだ空のような青なら、ハヤトは吹き抜ける風の如き緑。スーツの大部分は各々のトレードカラーに染め上げられ、スモークグレーのバイザーを始めとする各所の細かな意匠もまた違うものとなっているのが一目で分かる。
 
「気付いてたのなら話が早いわね。これから私達と一緒に着いてきてもらえないかしら?」

 ハンドガンを眼前の相手に向けつつ、マモリは空いた左手で携帯電話らしきものを掲げる。
 そのディスプレイに表示されているのは、銀色に輝く六角形に近い形のエンブレム。恐らくはこれが、彼等の属するチームのシンボルマークともいうべきものなのだろう。
 そんなマモリの問いかけにしかし、異装の男は余裕綽々といった様子で応じてみせる。

「俺もそう暇ではないからな。折角だがまたの機会にしてもらおうか」

 異装の男の答えを遮るように、立てた人差し指を左右に振りながら切って捨てたのはハヤトだ。

「生憎だけど、これってお茶の誘いとかそういうんじゃないからさ……意地でも付いてきてもらうぜ?」


 引き金が引き絞られるよりも早く、ゴーグル越しにも分かる二人の鋭い視線が、確かに異装の男を射抜いていた。 
 そんなマモリとハヤトを前にしてなおも、異装の男の余裕の崩れる気配は全く見られない。

「その自信と気迫だけは認めてやってもいいだろう……だが!」

 言い終わるか終わらぬうちに、腰の後ろから引き抜かれたショットガンがマモリ達に向かって火を噴いた。床面を深々と穿つ幾筋もの弾痕と、それによって巻き起こる粉塵とが、一発にこもる威力の高さを物語る。
 だが、分厚いベールのように視界を遮る粉塵が晴れていった時、そこにあるはずのマモリ達の姿は見当たらない。

「……ゥッ!」

 彼等の行方を追う間もなく、上下双方向から繰り出される鋭い一撃。反射的に抜き放ったサーベルでそれらを弾くも、ここであの銃撃がことごとく躱されていた事を、異装の男は認識せざるを得なかった。
 方や、攻撃を弾かれたマモリ達は即座に左右に展開し、挟みうちにするような格好で異装の男へと相対する。
 ハンドガンを変形させたと思しき警棒を手に、真っ先に飛び込んでいったのはハヤトだった。目にも止まらぬ速さで突き出される暴風のような連撃をしかし、異装の男は的確に自らの得物でいなしていく。
 速さこそ驚異的なハヤトの攻撃だが、動き自体はそこまで複雑ではない。むしろ単純かつ直線的といってもいい位のものだ。彼ほどの実力ならば、襲い掛かる攻撃の軌道を読み、反攻に転じるのも決して難しいものではないはずである。
 だが、マモリもハヤトもそんな余裕を与えさせる訳は当然ない。
 
――くッ……小賢しい真似を!

 異装の男が隙を見出そうとする度に、様々な方向から撃ち込まれる光弾。ある時は背後から、またある時は頭上から。かと思えば足元を狙うトリッキーな射撃。ハヤトの素早い連撃と、マモリの的確なアシストの前に、彼もペースを崩されるばかりだ。
 そんな状況にあってもなお、目まぐるしく繰り出される二人の攻撃を一振りのサーベルを巧みに操り、ことごとく捌いていく。掠り傷こそあれど、決定的な一撃だけは受けていない辺りに、彼の高い力量が窺える。
 とは言え、異装の男も先程までの余裕を保っているわけでは決してないようだ。

――長引けば……確実に不利だな……!

 そもそも今回出て来た目的は、あくまで”探索”の一環に過ぎないのだ。
 宇宙警察が追ってくるだろうと踏んでいたとはいえ、装備自体は本格的な戦闘に入る事を想定してのものではない。
 置かれた状況の苦しさを悟ってか、ここで異装の男はこの場からの離脱を図る。

「ふっ!」

 咄嗟に後方へと大きく飛び退き、さらにフェンスを蹴って勢いを付けるとそのまま、ビルからビルへと跳び移っていく。当然、その姿をただ黙して見送るような二人ではない。

「タスク!」

 二人の呼び声が重なるのと時を同じくして、別のビルから飛び出したのは黄色い影。
 ビルからビルに飛び移る異装の男めがけ、弾丸のように猛烈な勢いで飛び込んでいくそれこそ、先の二人と同様に黄色のスーツを纏ったタスクその人であった。

「でぇぇいッ!」
「ぐぬッ!?」

 ラリアートの要領で異装の男へ右腕を叩きこむや、タスクは勢いそのままにビルの壁面へと彼の身体を叩き付けた。重い一撃の連続に、苦悶の呻き声が異装の男から漏れ聞こえる。
 が、それでもまだ足りないと見えるのか、壁面を蹴って再び宙を舞ったタスクは二度三度と、同じように強烈な一撃を見舞い続ける。そして――。

「らぁぁッ!」
「ぉおっ……!?」

 何度目かの激突の後、どこかのビルの屋上へと異装の男は放り出された。全身に広がる苦痛に喘ぎながらもなお、サーベルを杖代わりに立ち上がろうと試みる。
 そんな彼の逃亡を許すまいと、ダメ押しの一手が打たれたのは彼がようやく立ち上がった正にその瞬間だった。フェンスの四隅から放たれた光の帯が、瞬く間に異装の男の身体を取り巻き、そしてその動きを完全に封じてしまう。

「これは……!?」
「どうやら年貢の納め時ってやつだな、デティス」

 身動きの取れない異装の男―デティスの前に、遅れて駆け付けたタスク、そしてマモリとハヤトの三人が姿を現した。さらにデティスの背後にももう一人、やはり他の三人と同規格の、黒を基調としたスーツを着用したケイの姿が見える。

「あなたのお目当てのものなら、私達がちゃんと回収させてもらったから」
「……ふっ、宇宙警察も随分と手荒な真似をするようになったものだな。知的生命権無視もいいところじゃないか」
「その知的生命権を、今の今まで散々踏みにじってきたあなたが言えた義理じゃなくって?」
「だな。とどめに二、三発ぶち込まれないだけ……まだマシなもんだと思うんだけど」

 おおよそ不穏な言葉をデティスに投げかけるハヤトをよそに、マモリはあのエネルギー体について問い質そうと、彼の前に立ちはだかる。

「それはともかく、あなたが血眼になって探してたコレ……一体何に使うつもりだったのかしら?」

 バイザー越しではあるものの、ケイの持っているアタッシェケースへと視線を向けながら問いかけるマモリ。既に回収したものも含め、中にはエネルギー体の破片が二つ収められていた。

「親切に教えてやったところで、貴様等に理解できるとはとても思えんがな」
「そう? なら私達が理解出来るまでじっくり付き合ってもらわないと。まぁ立ち話っていうのもなんだから、続きはベースに着いてからってことでいいわね?」

 腰のベルトのバックルから手錠らしきものを引き抜き、デティスの眼前にかざして見せるマモリ。だがそんな彼女の言葉にも、全く動揺する素振りは見られない。そればかりか唐突に、

「くふっ……ふははははははっ……」

 このように声を上げて笑い出す始末だ。そんなデティスの不敵な挙動に、掴みかかろうと一歩前に踏み出したタスクを制し、マモリは依然落ち着き払った様子で問いかけてみせる。

「何かおかしなことでも口にしたかしら?」
「さっきも言ったはずだ、俺もそう暇ではない……とな。お遊びはここまでにしようか」
「お遊び……だと?」
「このフィールドから、そう簡単に逃げられるなんて思わないで下さい!」

 あまりにも余裕綽々な態度に、思わずケイが声を張り上げる。
 それも当然だ。今デティスを捕えているこの特殊フィールドの発生装置はケイが設計、開発したものである。そうそう簡単に破られるものではないという自負が、彼女の中にある事は間違いあるまい。

「確かに、ことの外厳重な拘束だ。まともに振り切るのはまず不可能だろうな……だがこれならどうだ……!」
「……みんな! 退避してっ!」

 何かを察知したのか、退避を促すマモリの声がその場にこだまする。
 そう、彼女の耳は確かに捉えていたのだ。デティスの声に、機械的な響きが徐々に混じりつつあったのを。そしてそのデティス自身から、何かを刻む微かな音が聞こえてきたのを。
――明らかに危険だ。
 この二つの事柄から、瞬く間に導き出されたその判断の正しさを裏付けるかのように、デティスの身体が内側から突如として爆ぜた。
 咄嗟の判断で散らばるように飛び退いたものの、爆発の規模の小ささとは裏腹な強い衝撃の前に、四人ともフェンスへと強かに叩きつけられてしまう。その拍子に、あのアタッシェケースもケイの手から離れてしまう。

「しまった!」

 慌ててアタッシェケースを手元に引き寄せようとするケイだったが、それよりも早く撃ち込まれた二、三発の銃弾によってケースは弾かれ、宙に舞いあがったそれを黒い影が瞬く間に掠め取っていく。
 道一つ隔てたビルの屋上に飛び込んだその影は、つい今しがたマモリ達の目の前で爆発したはずのデティスへとその姿を変えた。

「コイツは確かに貰い受けたぞ」
「囮を用意しとくとは……相変わらず手の込んだ真似をしてくれやがる」
「色々と楽しませてもらったが、この辺で退散させてもらう」
「待ちなさい!」

 ケイの悲痛な叫びも空しく、身を翻したデティスは何処ともなく飛び去っていく。後に残された四人は、その様をただ見送る事しか出来ない。

「まんまと取られちまったけど、どうするマモリ姉さん?」
「どうもこうも、ありのままをキャプテンに報告するだけよ」
「回収に失敗してるんですよ? 何でそんなに平然としていられるんですか!?」

 あまりにあっけらかんとしたマモリの様子に釈然としないものを感じたのか、マモリへと詰め寄るケイ。ケースを一足早く掴めていれば、いやそれ以前に手放してさえいなければ――そんな悔恨の思いもあるのだろう。
 が、そんなケイの焦りも意に介する事無く、マモリは指を立てて意味ありげな素振りを見せるだけだ。

「まあまあ、そんなに興奮しないの。ね?」
「どうやら何かまた考えがあるようだな、マモリ」
「さぁ、それはどうかしら」

 タスクの問いかけに、おどけるように肩を竦めて答えるマモリだったが、次の瞬間にはもう、鋭くも真剣な眼差しが遥か上空へと向けられていた。

「……とにかく反省会はまた後にしてもらわないと。次の仕事が控えてるんだから」
「ビークルの方はどうなってる?」
「後三分弱で到着するわ。あなたたちも急いで」



 マモリの視線の先で、突如現れた黒点は徐々にその大きさを増していく。それは同時に、この街へと恐るべき危機が迫っている事を意味していた。

 
 ―――


 ちょっとしたハプニングに遭遇しながらも、遅めな昼食をとり終えた真帆が、充ち足りた様子で店から出て来たのは、街も夕焼けに包まれ出した頃だった。

「んぅ……おいしかったっ」

 小さく伸びをしつつ、家路につこうと駅の方へ足を踏み出したその時。群衆の中から飛び出した、驚愕に満ちた一声が真帆の耳に入ってくる。

「何だ、あれは!?」

 先程の店内での顛末に限らず、どうも興味を惹かれる事柄に遭遇するとそれを確かめずにはいられない。
 ある意味では困りものと言えるその気質が、彼女の歩みをピタリと止めさせた。
 ともあれ、その叫びが呼び水となり、一人また、一人と立ち止まる通行人が、いつしか大きな人だかりを生み出していた。

「うはぁ……でっけぇな……」
「飛行機か?」
「こっちに向かってくるぞ!」

 俄かにざわつき始める群衆。
 一様に空の彼方に目を向けている彼等に釣られるようにして、同じ方へと目を向けた真帆が見たものは――あまりに奇妙なものであった。



 それは全面、吸い込まれるような漆黒に染め上げられた奇妙な物体だった。
 二等辺三角形にも似たシルエットは所々に歪みが生じており、突き出した多数の棘や突起などと相まって、見るものに異様なまでの威圧感を与えている。
 その飛行体が徐々に高度を下げ、このビル街へと迫りつつあった。だが、それは決して墜落しかかっているというものではない。
 むしろ、群衆の目にはそれが明らかな意思をもって、自分達の方へと飛来しつつあるように映った。

「おい、逃げるぞ!」
「早く、早く!」

 この後に待ち受ける大惨事を予見してか、事の成り行きを見守っていた群衆の中から、我先にと逃げ出す者が現れ始めた。ものの数分と経たぬ内に、通りは逃げ惑う人々の群れによって埋め尽くされていく。

「きゃっ!?」

 そんな彼等を嘲笑うかのように突風を巻き起こし、猛スピードで真帆達の上を過ぎ去っていった黒い飛行体は、駅から少し離れた大通りの交差点へと直撃した。
 激しい振動。
 響き渡る轟音。
 そして巻き起こる土煙。
 それらが収まった後に現れたのは、地面へと垂直に突き立てられ、逆さまの状態で瓦礫の中心に聳え立っている飛行体の姿だった。

「何……あれ!?」

 一人動けずにいた真帆はただ、呆然とその光景を見つめる事しか出来ずにいた。



 だがこれは、この後に待ち受ける激戦の、ほんの始まりに過ぎなかったのである――。
 
 

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