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『機動戦隊ブレイジャー』Mission.01 ( III )

 2011-08-20

 ―[3]―


 それからしばらくの間、彼等の間に目立った衝突が起こる事はなかった。
 時折窓の外を窺いながらも、基本的には黙々と食事に終始する、そんな状況が続くのみだ。
――ただ一人を除いては。
 あれから、やはりケイだけは全く食事をとっていなかった。それを裏付けるように、彼女の前にトレイの姿は見当たらない。
 再びケイ自身に目を向ければ、その目付きはメガネ越しにも容易に見てとれる程に、一層険しさを増していた。
 右手の人差し指は、カツンカツンと小刻みにテーブルに打ち付けられており、その動きが止まる気配は全く感じられない。
 追跡中の相手の動向か、ハヤトとのいさかいか、はたまた他に何か原因があるのだろうか。いずれにせよ、ケイが苛立っている事だけは確かである。
 次第に早まっていく指の動きは、あたかも彼女の苛立ちの募り具合に比例するかのようだ。それに不快感を示してか、再びハヤトが口を開いた。

「なぁケイ」
「なんでしょう?」
「さっきからウルサイんだけど」

 ハヤトの言葉に、ケイが返してきたのは沈黙と突き刺すような視線のみ。なおも止む事のないその連打に、再びハヤトが不快感を露に口を開いた時だった。

「なぁケイ……ッ!?」

 二度目に返ってきたのは、先程と同様の沈黙ではなく、両手を強かにテーブルにたたきつけた音だった。
 突然の挙動に思わず、隣に座っていたタスクまでもが、ケイの方へと目を向ける。

「……全く人の気も知らないで」

 怒りのこもったその呟きを皮切りに、募りに募ったケイの怒りがとうとう爆発した。
 叩き付けられた両手はそのままに、グイと身を乗り出した彼女の剣幕は凄まじいものだ。

「向こうがいつ行動を起こすか分からない状況でのんびりと食事をとっているだなんて……正直どうかしてます」

 周囲を慮ってタスクが目配せするも、今の彼女が気付く気配は全く見られない。
 かたやハヤトの方はその様子を見て取るや否や、またかといった様子で再び、ハンバーガーに齧り付いていた。


 きっかけは違えど、ハヤトがその楽天さ故に突っ込まれるのも、ケイがこうして癇癪玉を破裂させるのも、そう珍しくない事のようだ。

 

  
「大体私は反対だったんです、こういう店に入ること自体」

 ケイが、募りに募ったその苛立ちを爆発させたのを受けてか、にわかに店内の空気が一変した。
 カウンターの奥では、店員達が戦々恐々といった面持ちでしきりに客席の様子を窺い、周囲の客も好奇や困惑のこもった視線を送っている。
 もちろん、その中に真帆が含まれている事は言うまでもない。

――あちゃ~……どうしたらいいんだろう……?

 このまま黙って事の成り行きを見守り続けるか、そそくさと店を後にするか、それとも――。
 ほんの数秒程の間に、真帆の頭の中を様々な考えが巡り、そして消えていくのだった。
 それらの存在を知ってか知らずか、ケイの白熱した語りはさらに続けられる。

「空気も悪いし、あまり栄養面でもいいとは思えないし……とにかく戻るまで食事は待つべきだったと私は……」
「あのさぁ」

 長々と続きそうなケイの言葉を打ち止めにせんと、それまで押し黙っていたハヤトが口を開いた。

「そんなに気に入らないんだったら、自分だけ先に帰ったらどうよ?」
「何ですって!?」

 その言葉にカチンと来たのか、一層身を乗り出さんばかりの勢いで詰め寄るケイ。

「……ケイ、止めるんだ」

 この状況に半ば呆れた素振りを見せながらも、見るに見かねたタスクの一声が、興奮しきっているケイに投げ掛けられた。

「ここは店の中だ、周りにも迷惑がかかる」
「けど!」
「タスクの言う通り。大体マナーも守れないようなヤツに、そんなえらそーなことは言われたかないっての」
「あなたにだけは言われたくありませんっ!」

 火に油を注ぐかのようなハヤトの軽口は、ケイの怒りをより一層強めてしまったようだ。
 もはやタスクにすら手に余るこの状況に、彼もさじを投げた様子を見せてしまう。



 が、そんなタスクとは対照的に腹立ちを隠せない者が一人、その後方にいた。

――どういう事情があるんだか知らないけど、いつまでも騒いでいいわけないじゃない!

 先程まで困惑一色だった真帆の表情は、今や眼前で繰り広げられている口喧嘩への憤りで染め上げられていた。
 我慢もいよいよ限界に達し、席から立ち上がろうと彼女の両手はテーブルにかけられる。


 しかし、そんな真帆の怒りの声が彼等に届く事はなかった。
 いやそもそも口を開く暇すら与えられなかった、と言った方が正確かも知れない。
  
「そもそも!前々からあな……むぐっ!?」

 ケイの口が開かれたところを目掛け、その中へと押し込まれたハンバーガー。
 予期せぬ出来事に思わずタスクとハヤトが目を向けると、そこにはいたずらっぽい笑みを浮かべながら、手にしたハンバーガーを押し込んでいるマモリの姿があった。

「はい、いっちょ上がり……ってね」

 おおよそ十秒くらい、この状態が続いた後。
 ケイが無意識のうちにかぶり付いているのを認めると、ようやくマモリもハンバーガーから手を放した。

「こうでもしないとまともに口にしてくれないでしょ?仕事熱心なのは感心するけど、ちゃんと抜くとこ抜いとかないと」

 何が起きたのか、未だに把握しきれていないケイ。
 一部始終を見守りながらも、反応に窮したままのタスクとハヤト。そして――。

――はい……?

 立ち上がろうとしながらも、予期せぬ展開に唖然としたままの真帆までも置いてきぼりにした形で、マモリの語りはさらに続く。

「なんだかんだ言っても空いてたんでしょ、おなか」

 笑顔で見つめてくるマモリを前にして、観念したかのようにもぐもぐと口を動かすケイ。
 そこから飲み込むまでの間、厳しかった表情が徐々にほどけていく様を、見守る三人は確かに捉えていた。
 そんなケイの口からこぼれた一言は、先程までの激情を微塵も感じさせない位に落ち着いたものだった。

「……悪くない……味です」
「ね? あたしの言った通り。食わず嫌いは良くないんだから」

 その一言に満足したような笑みを浮かべつつ、マモリはケイを席につかせながらそっと、頭を撫でてやる。
 感極まってか、何時しかケイの目尻には微かに涙が浮かんでいた。

「おなかが空いてると、それだけイライラしやすいんだから。気持ち張り詰めすぎてるとミッションにも差し支えるわよ」
「……はい」
「あぁもう、そんなに慌てない!噎せちゃっても知ら……だから言ったのに」
「すみません……えふっ……」

 一口含んだ事でスイッチが入ったのか、ケイは勢いよくハンバーガーを頬張っていく。
 あまりに勢いが良過ぎたのか、ものの十秒と経たぬうちに噎せかえってしまったが。

 頭を撫でていたマモリの手が、動きはそのままにケイの背中に移るまで、さほどの時間はかからなかった。
  
「ま、これで一件落ちゃ……イテテテッ!?」

 我関せずと言わんばかりに暢気な呟きを見せるハヤトに呆れてか、背後に回り込んだタスクがグイと、彼の耳を捻り上げた。

「他人事みたいな口を聞いてられる立場じゃないだろ。今のはお前にも責任アリだ」
「わっ、分かってるから……だから耳引っ張らないでって……いったぁぁ……」

 ケイとは別の意味で涙目なハヤトの懇願も空しく、タスクの手にこもる力が弱まる気配は見られない。
 結局数十秒経ってようやく放された頃には、ハヤトの耳たぶは真っ赤になっていた。
 未だ痛がるままのハヤトを横目に、タスクの手が今度は背もたれにかけられていたジャケットを掴む。

「そろそろ行こうか。奴もあのポイントに着いてる頃だろうしな」
「そうね……ちょっと待ってて」

 言い終わらぬうちに、カウンターの方へと駆けていくマモリ。
 ややあって、ハンバーガーの入った紙袋を小脇に抱えて戻ってきた彼女に、タスクは軽く呆れた様子を見せる。

「あれだけ平らげといて、まだ足りないってのか?」
「さっきのことを謝ってきたついでよ。それにキャプテンの分も買っとかなきゃ」

 先んじてケイとハヤトが店外に出ていたのを受け、マモリ達もドアの方へと歩みを早める。
 その途中、不意にタスクの口からこぼれた一言に、再びマモリの注意が引き付けられた。

「それにしても、相変わらず美味しいところを持ってくよな。お前といい、あの若いのといい……」
「またあなたはキャプテンのいないところでそういう口を利いて……悪い癖にも程があるんじゃない?」
「単に事実を言ったまでだ。それにアイツにはまだ荷が重過ぎる、キャプテンなんて肩書きはな」

 今度はマモリが呆れた素振りを見せる番だった。
 口調こそ柔和さを保っているものの、タスクを見るその目に、笑いは欠片も含まれていない。

「……そう考えてるのなら、ここまで着いてくる必要、なかったんじゃない?」
「アレでも見込みだけはある。一応は試させてもらおうと思ってな」

 吐き捨てるように呟くや、タスクは足早にドアを抜けていく。それに続いてマモリもまた、呆れた表情をそのままに寒空の下へと踏み出して行った。
 

 ―――


 騒ぎも一段落し、他の客達が次第に彼等への興味を失っていく中、ただ一人真帆だけは最後まで、彼等の挙動を追い続けていた。
 よほど真剣に見入っていたのか、トレイの上のポテトは萎びてしまい、手にしたハンバーガーにさえ、未だに口が付けられていない。

――ホントおかしな人たちだったなぁ……。

 そんな想いを抱きつつ、彼等が立ち去るのを目で追っていた真帆を、盛大に鳴り響く腹の虫が現実へと揺り戻す。
 それに追随して、彼女が半ば忘れていた空腹感が蘇って来るまでに、そう時間はかからなかった。

「そうだ……すっかり忘れてた!」

 慌ててハンバーガーに齧り付く真帆。時折むせ返り、その度にドリンクを啜る中で、真帆の頭の中にあったのは先程の四人、そして今朝出会ったあの青年の事だった。

――そう言えば今朝のあの人、今の人達と雰囲気が似てた気がするけど……。

 単に服装が似通っていた、というだけでは説明し難い共通点。
 何となくだがそれを、真帆は知らず知らずのうちに彼等に見い出していたのかも知れない。

――もしかして……あの人も仲間だったりして!




 果たして、その読みが的を得ていた事を、真帆は後々になって思い知らされるのだが――もちろん今の真帆がそれを知る由はない。


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